4 特別編 十子さんの場合

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おっと、挨拶しないと。 「居酒屋まるの店主、烏丸泉実と申します。メニューらしいメニューはありませんが、なるべくお好みのものを提供させていただきます。」 その女性は、常連さんたちの手元をちらりと見た。 どんなものを出されるのか、観察されたかな。 「ビールをいただきます。グラスは2つ。食事をしてきたばかりなので、料理は少し待っていただきたい。」 「はい。」 凛とした声だった。 張りがあるというか。 かなりの役職の人だろうか。 常連さんたちは、黙り込んだまま新しいこのお客さんたちを値踏みしているように感じる。 どうか、失礼なことを言い出しませんように!
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