4 特別編 十子さんの場合

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【十子さんサイド】 付きだしの卯の花和えは、素朴な味で美味しいと、十子さんは感じた。 他の客たちの料理も美味しそうなので、ここで夕食も兼用出来ればよかったと少しだけ後悔した。 「県庁のお仕事で、東京に来られたんですか?」 店主に聞かれて、十子さんは頷いた。 別に根ほり葉ほり聞かれている感じではない。 押しつけがましくない話し方に、十子さんは好感をもった。 「県のアンテナショップ出店の下準備を手伝いに。」 間違いではない。 しかし、それは、秘書課の仕事ではない。 「現場の方のお仕事がザルなんです~。おかげで、活を入れに十子さんが駆り出されて、いやぁいつもながらカッコいいですぅ~!」 「余計なことを言うな、変質者。」 「十子さんとの出張でしたら、何百日あってもOKですよぅ。」 「新婚が何をほざく。」 十子さんは、部下に厳しい。 特に、この男には。
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