最終編 照子ちゃんの場合

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「クリスマスなら、肉出るよね?俺、チキンじゃなくても、牛も豚も羊もいけるよ!」 知ってるよ、木戸。 肉ならなんでもいいと日頃から豪語しているじゃないか、おまえは。 「狼の兄さん、たまには兄さんが肉を持ち込んだらどうだい。」 「そうよそうよ。あんたの肉の準備で、泉実ちゃんがずっと厨房にこもってたら、参加できないじゃない。」 珠美さんと琴子さんのコンビから追求され、木戸は困った顔になった。 「えー、俺が料理して持ってくんの?俺、生でいいんだけど。」 「そういうことじゃないわよ、バカ!それでいいなら、私だって生魚持ってくるわよ!」 「ちょいと珠ちゃん、狼の兄さんも。論点がずれてるじゃないか。」 まったくだ。 生肉と生魚を自分の分だけ持ち込んで食えばいいって話じゃなかろう。 ようは、クリスマス用のチキンってことで。 「ローストチキンとローストビーフくらいでしたら、用意しますよ。魚でしたら、他の料理に合うようカルパッチョにでもしてお出しできますし。」 それに、頼むから店のものを食ってくれ。 黒字貢献、あと他のお客さんに万が一にでも生物を持ち込み提供されたらかなわない。 俺の店から食中毒を出さないでほしい。
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