最終編 照子ちゃんの場合

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その奥様風な女性、俺を紹介されて嬉しそうな顔をして、それからすぐに眉を潜めた。 なんだろう、何か不愉快な思いをさせるような外見だろうか。 もしかして、おばあちゃんから「いずみちゃん」と名前だけ聞いていて、女性だと思っていたとか? なのに、現れたのはこんな30半ばの作務衣姿の男だったとか? 女性の手には、商店街の外まで行ってきたのか、近くのコンビニのビニール袋が。 「ええと、この近くで居酒屋の店主をやっている烏丸泉実と申します。」 「はじめまして、こうしてお会いするのは初めてですね。」 「はい?」 会うのは初めて? 「知り合いが大変お世話になっております。一度お礼を申し上げにうかがおうと思っておりましたのよ。」 知り合いって誰だろう。 人間で思い当たる人はいないから・・・・・・ もしかして、この人、人外!? 俺が焦っていると、肉屋のおばあちゃんから「後は頼んだよ、泉実ちゃん」と丸投げされてしまった。 いや、俺、買い出しにきたんだが。
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