最終編 照子ちゃんの場合

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「そして、踊りを習えるところを探しておりましたら、肉を売っている方があなたを紹介してくれましたの。」 肉屋のおばあさん、本当に余計なことを。 「お会いできて嬉しかったのですけれど、胸元の御守りは余計でしたので、ちょっと封印させていただきました。」 それで、あのときの不審な表情。 嬉しいんだかびっくりしてんだか、そんな感じだった。 御守りを感じ取っての、嫌そうな雰囲気だったんだな。 「それでですね、照子さん。残念なお知らせです。」 この辺に、ダンス教室はありません。 そう、アイドル化とやらにふさわしいと思われるダンス教室は。 この近隣、高齢者が多いので、公民館で日舞だの民謡だのは月に3~4回やっているみたいだが、それがアイドルの踊りになるとは思えない。 俺が知っているアイドルというものがそうならな。 「それでしたら!あなたに会う前に!解決しました!」 うん? 照子さんは、持っていたコンビニの袋からガサガサと何かを取り出した。 「これ!これです!ダンスの教本です!」 照子さんが嬉しそうに掲げたもの。 それは、ダイエットを謳い文句にしたダンスのDVD入りの冊子だった。
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