最終編 照子ちゃんの場合

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とにかく、ここは照子さんをあまり刺激しない方向で。 タカさんとウカさんが、時々「照子ちゃん、そろそろ出ておいで」と声をかけるくらいにして、ひたすら待つ。 そして、開店時間。 俺が暖簾を手に戸を開けるのと、ヤタが「ぎゃあ!よもや店内でご無礼な真似をしておらんだろうな!」と失礼な言葉を浴びせてくるのと、狐たちが「天照大神様はいかがでしょうか。宇迦之御魂神様は。」とおろおろと心配してくるのとが全部同時で。 さらに。 「泉実!この神気はどうした!無事か!」 来た。 やっぱり来た。 他の妖怪のお客さんたちは、きっと畏れ多いとかで来店を控える中、逆に血相を変えてどかどかと入ってきそうなミハイさんが。 いや、心配をしてくれるのはありがたい。 心強いんだが、このあとの展開が読めるから辛い。 「あのですね。ちょっとわけがありまして。」 「貴様らああああ!泉実の慈愛に満ちた善良な心根につけこんで、開店前から入り浸るとは何事だあああ!私でさえ同居したい衝動を抑えて通っているというのに!!」 本音を語るな、いや、その本音をどこかで祓い浄めてこい、吸血鬼。
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