最終編 照子ちゃんの場合

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「あの、ですね、高御産巣日様。」 恥ずかしそうに、照子さんが目を伏せた。 「実は、まりちゃんと踊ってみて、少しは振りを覚えたのですけれど、どうにも速い音楽についていくのが難しくて・・・私には才能がないということがわかったのです。」 いや、才能と言うか、これまで見たことも聞いたこともないようなダンスを、普段体を動かしていないであろう照子さんが、数時間踊っただけでどうにかなるわけがない。 むしろ、よく何時間も練習したと感心する。 やはり、努力の人、もとい、神様なんだなあ。 努力し続ける神様だからこそ、生まれてすぐに高天原を任されてずっとそれを維持し続けているんだし。 これがスサくんだったら・・・高天原、とっくに崩壊している。 そこは、断言してもいい。 「でも、楽しかったのです。新しいものに触れるって、新鮮で刺激的でした。ですから、高天原に戻っても、たまにはその・・・他の方にも教えて、一緒に踊ってもいいと思います?」 「もちろん!一人で踊るより楽しかったんじゃろう?」 まりちゃんも一緒に踊ってくれたから、それが照子さんには余計嬉しかったんだろうなあ。
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