最終編 照子ちゃんの場合

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ともかくも、照子さんが高天原に戻る方向で話が進み、俺はほっとした。 さも呆れたような苦い表情でグラスを口にするミハイさんに、礼を言う。 「ありがとうございました、ミハイさん。ミハイさんがおっしゃってくださったおかげで、俺もタカさんもどうにか照子さんの気持ちをくんだ形で説得することができました。」 普段の言動の大半は妙だが、ここぞというときにずばりと正論を言い放ってくれるミハイさん。 誰にも媚びず、余計な遠慮もせず。 そういうときは、本当に頼りになるんだよなあ。 うん、そういうときは。 「礼など。水くさいではないか。」 俺がワインを注ぐと、ミハイさんの機嫌上昇。 「私としては、当然のことを言ったまでのこと。」 「当然だなんて。照子さんのためにあの提案を。」 「あの女神なんぞ、どうっでもいい!これ以上、おまえの平穏な生活がかき乱されるのは我慢ならん。あんなものに居座られたのでは、おまえと私の貴重な時間が邪魔されるではないか!」 店の黒字がかかった、客と店主としての貴重な時間がな。 あと、本音はもうちょっとしまっておいてくれ、ありがたみがどんどん薄れる。
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