1 珠美さんの場合

3/50
前へ
/260ページ
次へ
それから、外国の投資家だというオズワルド・ミハイさん。 外見はハンサムな大金持ちの外国人は、実は吸血鬼。 高慢な物言いで、俺の店を貶し、俺のこともついでに見くびり、木戸と仲が非常に悪いとんでもない客。 売り言葉に買い言葉で、木戸に対抗して肉を食べ、拒絶反応でぶっ倒れるという事件を店で起こしてくれた。 しかも、介抱した俺に、こともあろうに術をかけようとした。 ありがたいことに、その術に俺がまったくかからなかったわけだが。 そのことをどう思ったのか、それまでの態度を180度変えて、妙になついてきた。 さらに、どこをどう勘違いしたのか、はたまた人間には理解しがたい思考回路なのか(後日、人間の常識があまりにないと判明)、求婚までしてくる始末。 もちろん、俺にそんな気はない、微塵も。 なのに、ミハイさんをいまだに客として迎えている理由はただ一つ。 上客だからだ。 血液以外に口にできるものがフルボディの赤ワインだってことで、来店するたびに高いものを注文して空けていってくれる。 ようするに、俺は店の黒字のために吸血鬼も受け入れたってことだな。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10562人が本棚に入れています
本棚に追加