1 珠美さんの場合

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先頭の女性は、ワンレングスの黒髪に、ラベンダー色のスーツ。 少しつり目の、でも決してキツい印象ではない美人。 モデルのようなスレンダーな体格。 すらりとした脚は、細いというよりしなやかで無駄な肉がついていないという感じ。 そんな女性が、よくもまあこんな店に来たもんだ。 その後ろには、職場の同僚か後輩か、やはり若い女性が二人。 「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ。」 カウンター席も空いているが、木戸とミハイさんが両端に離れて座って、どうにも勧めにくい。 テーブル席は二人掛けだから、椅子をもう一脚出せばいいかな。 そう思っていると。 「珠美先輩?」 後ろのショートカットの女性が、先頭の女性に呼び掛けた。 呼ばれた先頭の女性は、何故か呆然とした顔をして固まっている。 その視線の先には、木戸とミハイさん。 唐揚げをくわえながら振り返った木戸の口から、かじりかけの肉がぽとりと落ちる。 「うえ・・・猫ま「やあだああああ!久しぶりじゃない!元気だった?ええ、そう、何年ぶりかしらねー!」」 何か言いかけた木戸につかつかと近寄ると、思いきり背中をバンバン叩いてきた。
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