最初の事件 -現場検証ー

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「なんらかの原因があってアドレナリンが過剰に分泌され、火事場の馬鹿力ってやつを発揮したんでしょうが、それによって心臓に負荷がかかって血液の循環や酸素の取り込みがうまくできなくなったんでしょうね。どうしてそうなったか…と聞かれると、原因は不明です」 白手を装着した両手を上げ、お手上げのポーズを取った。 本田はそれを聞いても引き下がらない。 「病気とかでこういった行動をとることはありますか?」 「そうですねぇ…狂犬病とかは割りとそういった行動に近い動きをするとは思いますが、もしそうなら前兆があったとは思いますよ。発熱や食欲不振、水を恐れるなどの神経症状とか…ここに辿り着く前の症状が」 本田は顎に手を当てて考え始めた。 30秒ほど次の質問が来るのではないかと待っていたが、本田は自分の世界に入ってしまったようなので、黒崎も自分の仕事へ戻った。 今では加害者として脳内処理されている男のそばにしゃがみ込んでいた本田は、男の左手にふと目をやった。 手の甲に何か書いてある。 にじんで読み取ることはできないが、男は右利きであることは確かなようだ。 画数が少ないことからアルファベットにも見えなくはない。数字の14ははっきり見えるが……。
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