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この男の奇行がどういった理由で行われたのか分からなければ真相解明は難しい。
そう考えた本田はその場に立ち上がって五十嵐を目で探した。
五十嵐は動画を撮影したであろう窓の前から室内を見回していた。
「おい、五十嵐」
「あ、はい」
本田に呼ばれて慌ててテーブルや椅子をよけて近づく。
「すぐにこの動画と防犯カメラの映像を神藤先生に分析してもらってくれ。なんらかの精神疾患があるのか、確認してもらえ」
神藤の名前が出たことに少し興奮した様子の五十嵐は、にこやかに笑った。
「了解しました」
─── おいおい、女の方じゃなくてお父さんの方だぞ。
五十嵐のとろけそうな顔を見て思わず本田も心の中でツッコミを入れてしまう。
そのついでに再び黒崎の名前を呼んだ。
いよいよ不機嫌そうな顔をして歩み寄ってきたが、本田はそんな事を気にするような男ではない。
「すぐにこの男性の検体を検査に回してください。ウイルスに感染してないかどうか、しっかり調べて結果を送ってもらってください」
「……了解」
五十嵐とは正反対の反応だったが、周囲が気にすることはなかった。
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