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ランチメニューがワンコイン、500円で食べられるのだからにぎわうのは当然だった。
一人の女性が定食屋に入ると、「満席なので相席でもいいですか」と店員から声を掛けられた。女性は頷き、見知らぬ男性と向かい合って食事をすることになった。
男性は見た感じ40代後半と言ったところか。少しやつれたような男はスーツ姿で、テーブルにスマートフォンを横向きに置いて何かの動画を見ているようだった。
まだ30代半ばの女性は、できるだけ男性と目を合わせないようにスマートフォンを片手にパズルゲームを始めた。
今は誰だってゲームをする。自宅にいなくても遊べるゲームがあるのだから利用しない手はない。しかも無料だ。
ゲームをしているとすぐに食事は運ばれてきた。
から揚げ定食を食べていた男性は最後のから揚げに箸をつけた。
同じから揚げ定食を注文した女性は、初めの1個に箸をつける。
揚げたてのから揚げは熱くて、油が口の中に広がった。
美味しいかどうかは何とも言えないが、ボリュームもあるから文句もない。
白いご飯を箸ですくって口の中に詰め込む。口の中でから揚げとご飯が出逢って、新しい味が生まれる。この瞬間がたまらない。
女性はパズルゲームを中断したままご飯に夢中になった。
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