第2の事件 ~防護服~

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解剖にも立ち会うほど日常的に見ているものでも、今の江原にはキツイ。 ──ワインなんて飲み慣れないものを飲むんじゃなかった……。 そう思いながら、大きく深呼吸をした。 「その後、もう一人の男子学生を一瞬ターゲットとして捉えましたが、三人組の女性にシフトしたそうです。三人のうちの一人の腕に噛みついた後、周囲にいた五名に軽傷を負わせています。その後、女性は突然動きを止め、泡を吹いて倒れました」 「つまり、目撃者から見た被疑者は、明らかに異常だったってことですか?」 彩香が訊いた。 「乗客のほとんどが、“ゾンビみたいに急に暴れて噛みついてきた”と、口をそろえて言ってたよ。つまり、異常ってことだろ?」 五十嵐はそう言って顔をしかめながらため息を吐いた。 その時、隣の部屋が少しだけ騒がしくなった。彩香はその騒がしさが気になって、隣の部屋に目を向ける。と、同時にドアがノックされた。本田がドアを開けると、そこには神藤の姿があった。 「遅くなってすまない。事件の概要は移動中に聞いたよ」 神藤が現れたことで野本が席を立ち、神藤に譲った。 彩香は再び五人の男に囲まれる。 ──お父さんがいるのは心強いんだけど…この壁に囲まれた感じは慣れないな……。 彩香は心の中でそう思った。 あまりにも大きな男性に囲まれていると、妙な圧迫感を感じる。そうでなくても閉鎖的な空間を苦手とする彩香にとって、その居心地の悪さは大きなストレスだった。 神藤も来たところで本田はマイクを手に取った。
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