女神降臨

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女神降臨

大手ディスカウントショップ店内で、長い髪をひとつにまとめた彼女は納品作業をしていた。 動くたびに髪の束が左右に揺れる。 ほのかに香るシャンプーの香りに一人の男性が引き寄せられる。 「手伝いますか?」 声を掛けたのは20代のまだ若い男性だった。 先日、フルタイムのパートで入ってきた新人だ。 箱ティッシュをケースごと持ち上げると、コロ車に乗せる。 「平気です」 彼女はそう告げると、次の段ボールを担いでその上に重ねて乗せた。 見た目よりも力がある。 比較的倉庫は広い方だが、在庫が多いために狭く感じる。 倉庫内で談笑している者もいれば、しゃべる暇もなく動き回っている者もいる。 「折原さん」 背後から声を掛けてきたのはこの店の店長だった。 「はい」 彩香は作業の手を止めて振り返った。 「少しお時間いいですか?」 「あ……この紙の補充だけしてもいいですか?」 「分かりました。じゃあ、事務所で待ってます」 彩香とさほど背の高さも変わらない店長は、革靴の音を響かせて元来た通路を戻っていた。
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