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幼い頃から可愛げが無いと言われた僕の憎まれ口が言葉を紡ぐ。腹が立っているというわけでは無いが、そういう希望論は正直聞き飽きてうんざりしていたところなのだ。しかし僕の発言を気にも留めずに先輩は続ける。
「雨の日だっていいじゃないか、それはそれで趣がある」
天に向かって手を伸ばす。
「夜だって寒くないさ。案外夜空を見上げていると熱意が沸いてくるものだ」
日の光で温まった手を胸に当てまるで演劇さながらの演技を見せる先輩に半ば呆れながら僕は鉛筆を走らせた。
「食事はどうするんですか? まさか」
「はは、案外空から降ってくるかもなあ」
何を言っているんだか。
僕はどうでもよくなって社交辞令的に言葉を並べることにした。
「はあ。空からですか」
「あぁ、こんなに巨大な空間が頭上に広がっているんだ! 何が降って来てもおかしくないだろう?」
相変わらず場の空気を読む気が無いのか声高らかに叫ぶ先輩。正直作業の邪魔なので、暗に黙ってくれという意味合いを込めて僕は言葉を放り投げた。
「自分ならそんなものを待つよりかは下のコンビニでパン買ってきますけどね。その方が文字通り地に足のついた考えでしょうし」
憎たらしい物言いだとは分かっていたが、考える余地もなく放たれた僕の言葉。
それに答えたのはキーッという先輩の椅子の音だった。
「地に、足をつけて答えが見つかると思うか」
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