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「誘ってもらえるとも」
笑みを浮かべた表情とは裏腹に、その声音には圭一を責める色が混じっている。
当然だろう。圭一は7年前、高校生活最後の卒業式の日、高沢の告白を受け入れなかった。
本当は心が躍るほど嬉しかったのに―――。
再開は予期せぬ偶然だった。
出張帰りの新幹線の指定席でたまたま隣に居合わせたのだ。
しかし、その時はお互いに顔を見合わせただけで話をすることはなかった。通路を挟んだ並び席に、高沢の上司と思われる相手が座っていたからだ。
圭一は寝たふりをしながら、隣の気配を伺っていたが、高沢の感情を読み取ることはできなかった。
今さら圭一に未練などないだろう。
圭一は窓越しに高沢の顔をこっそりと盗み見た。
このまま別れてしまったら、もう二度と会うことはないかもしれない。
唇を開きかけて、迷う。固く拳を握りしめた。
―――傷つけたくせに。
―――今さら何を言っても遅いということも分っている。
―――それでも。
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