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あの悪魔は、僕だけでなく、僕の家族までをも絶望の淵へ突き落としたのだ、と。
僕たち家族は、破滅の道へと転がり落ちていた……。
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「……っ……ヴっっ、ヴうっ……!!」
動物の唸り声のような、絶叫を低く噛み殺したような、異様な声を耳にして、僕は突如、目を覚ました。
全身に冷や汗が噴き出し、心臓が早鐘を打っている。長く息を止めていたかのように呼吸が苦しくて、肺が必死に酸素を取り込もうとしている。額から流れ落ちる汗が目に入りそうになり、何度も袖で汗をぬぐう。
さっき耳にした恐ろしい音が、自分の呻き声だったことに気づいて、冷たいものが背筋を走り抜ける。
――恐ろしい夢を見ていた。
夢の中で感じた絶望と恐怖が、手に触れられるほどリアルに感じられる。
汗にぬめる掌へ目をやると、自分の手が小さく震えていることに気づく。
知覚が、少しずつ自分のいる場所を認識し始める。
ここは、僕の勉強部屋だ。
穏やかな春の陽光が開かれた窓から優しく差し込んでいて、頬には柔らかなそよ風があたっている。
ぼんやりと右手の鏡に映る自分を見ると、ひどく懐かしい感覚に襲われる。
(……!?)
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