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光を受けキラキラと輝く瞳に吸い込まれそうだ。
「あの……西城様……」
慌てて上着を脱ごうとする彼を止める。
「風邪を引くといけないから、それを着ていなさい。……君の名前を教えてくれないか」
「……山崎、静流、です……」
その名を、心の中で呟く。
――山崎静流。
「僕の親衛隊員ではないよね?」
「はい。乾様の隊です」
「……蒼の親衛隊員なんだね……」
わかっていたはずなのに、胸がキリキリと痛む。
そう、彼は蒼のものだ。それはどうしても覆すことはできない。この学園にいる限り、否、この世界に生きる限り、僕たちにルールを破ることは許されない。
「夜遅くに、こんな場所に君ひとりでいるのは危ないから、しばらく僕も一緒にいるよ」
せめて、今だけ。
蒼ではなく、僕のそばにいてほしい。
「静流って呼んでもいいかい?」
「はい!」
入学したばかりで、おそらくは親衛隊隊則さえ理解していない彼が、無邪気に微笑む。
その笑顔に心が満たされる。
汚れない優しい笑顔。――この笑顔を守るのが僕だったらと、そう願わずにはいられない。
でも、彼は蒼のものなのだ。
「諜報部の仕事はきついだろう?」
彼をうながして、近くのベンチに腰掛ける。
「えっと……実は、今日初めて一人での任務なんです」
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