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恥ずかしそうにうつむく様子が愛らしい。
僕の周りにいる者達は、自分自身の美貌を熟知し、それを利用する術を知り尽くしている。
だが、目の前にいるこの少年は、おそらく自分が放つ魅力にさえ気づいていない。
これほど無垢で美しい存在に、僕は出会ったことがなかった。
「親衛隊の仕事をちゃんとこなしたいと思ってるんですけど、なかなか慣れなくて……」
「諜報部の一年生は、一番きつい仕事を任されるからね」
「はい。……でも、入隊を許されただけでも幸せですから」
僕を見上げながら、嬉しそうに微笑む。
もしもあの時、僕が先に君に声を掛けていたら、その笑顔は僕のものになっただろうか……?
「親衛隊に入っても、蒼と直接話す機会は無いだろう?」
そうであってほしい。
多くの隊員達の中に紛れ、君が蒼に見出されなければいい。
「はい。乾様はあまり親衛隊の会合にはいらっしゃいませんし、僕は入隊したばかりなので、お会いする機会なんてありません」
「静流はそれでいいのかい?」
「はい!」
上気した頬に手を差し伸べたくなるのを堪える。
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