第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]

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「父の影響で、ずっと乾様に憧れていたんですけど、この学校に入学する事ができて、……本当ならそれだけでも充分なくらいなのに、親衛隊にまで入れて、本当に幸運だと思ってます!」 君は、きっと蒼に見出される。 他人に興味を持たない蒼が、あの日、君に声を掛けた。 それは、運命にも近い出会いだったのかもしれない。 だとしたら、僕のこの想いは、どうすればいい……? 「西城隊の皆さんは、とても幸せですね」 「え?」 苦い想いに沈み込んでいた僕は、静流の言葉で我に返る。 「こんなに優しい方をお守りできるなんて、とても幸せだと思います」 「僕は優しい人間じゃないよ」 思わず本心がこぼれ落ちる。 物覚えついた頃から、自分が他の人間とは違っていると気づいていた。 周りは全て自分にかしづく存在で、命令を下されるのを待っている。僕の気持ちには関係なく、彼らは僕の寵愛を受けようと必死になり、少しでも優しくすれば、溺れる者のようにしがみついてくる。 そんなふうに執着されることは、僕にとっては呪縛のように重苦しく、嫌悪の対象でさえあった。 「少なくとも、親衛隊の隊員達に優しくするつもりはない」 傍らで、静流が小さく笑った。 「でも、西城様はとってもお優しいですよ?」 ひどく優しい声音に、胸を突かれる。     
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