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「父の影響で、ずっと乾様に憧れていたんですけど、この学校に入学する事ができて、……本当ならそれだけでも充分なくらいなのに、親衛隊にまで入れて、本当に幸運だと思ってます!」
君は、きっと蒼に見出される。
他人に興味を持たない蒼が、あの日、君に声を掛けた。
それは、運命にも近い出会いだったのかもしれない。
だとしたら、僕のこの想いは、どうすればいい……?
「西城隊の皆さんは、とても幸せですね」
「え?」
苦い想いに沈み込んでいた僕は、静流の言葉で我に返る。
「こんなに優しい方をお守りできるなんて、とても幸せだと思います」
「僕は優しい人間じゃないよ」
思わず本心がこぼれ落ちる。
物覚えついた頃から、自分が他の人間とは違っていると気づいていた。
周りは全て自分にかしづく存在で、命令を下されるのを待っている。僕の気持ちには関係なく、彼らは僕の寵愛を受けようと必死になり、少しでも優しくすれば、溺れる者のようにしがみついてくる。
そんなふうに執着されることは、僕にとっては呪縛のように重苦しく、嫌悪の対象でさえあった。
「少なくとも、親衛隊の隊員達に優しくするつもりはない」
傍らで、静流が小さく笑った。
「でも、西城様はとってもお優しいですよ?」
ひどく優しい声音に、胸を突かれる。
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