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「今日は本当にありがとうございました!」
元気いっぱいにお辞儀をする姿に、思わず笑みがこぼれる。
「静流は、子犬みたいだね」
「えっと……、それって、褒めてるんですか?」
僕は静かに立ち上がった。
無防備に僕を見上げる愛らしい彼を、思い切り抱きしめたい。
もし、そうしたら、僕たちはどうなるのだろう?
親衛隊隊則に反し、彼を僕のものにしてしまったら……?
背筋を冷たいものが駆け抜ける。
「すごく可愛いって意味だよ」
愛しすぎて、胸が苦しい。
僕は彼に背を向け、ゆっくりと歩き出す。
生まれて初めて味わう、自分をコントロールできない感覚に恐怖を覚えながら。
その感情は、僕だけではなく、静流をも傷つけてしまうものだ。
激情に身を任せてはいけない。
静流を傷つけたくない。
僕は、彼の笑顔を、彼の幸せを守りたい。
きっと静流は、孤独な蒼の魂を癒すのだろう。
そして、僕は、傍観者として生きていくのだ……。
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