第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]

7/75
1183人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
「今日は本当にありがとうございました!」 元気いっぱいにお辞儀をする姿に、思わず笑みがこぼれる。 「静流は、子犬みたいだね」 「えっと……、それって、褒めてるんですか?」 僕は静かに立ち上がった。 無防備に僕を見上げる愛らしい彼を、思い切り抱きしめたい。 もし、そうしたら、僕たちはどうなるのだろう? 親衛隊隊則に反し、彼を僕のものにしてしまったら……? 背筋を冷たいものが駆け抜ける。 「すごく可愛いって意味だよ」 愛しすぎて、胸が苦しい。 僕は彼に背を向け、ゆっくりと歩き出す。 生まれて初めて味わう、自分をコントロールできない感覚に恐怖を覚えながら。 その感情は、僕だけではなく、静流をも傷つけてしまうものだ。 激情に身を任せてはいけない。 静流を傷つけたくない。 僕は、彼の笑顔を、彼の幸せを守りたい。 きっと静流は、孤独な蒼の魂を癒すのだろう。 そして、僕は、傍観者として生きていくのだ……。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!