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[15. 高校1年・夏【伸】]
7月に入り、30度近い夏日が続いている。
梅雨明けは発表されていないが、まさしく真夏の到来だ。
「今日の体育は、静流のクラスと合同だよな」
一緒に朝食を食べながら、向かいに座る静流に話しかける。
基本的に食事は静流が担当してくれているのだが、料理の腕はなかなかのものだ。
うちの学生は料理ができないやつらばかりだから、皆、朝は抜き、昼と夜は外で食べている。朝も夜も自炊しているのなんて、学園内でもうちの部屋くらいじゃないだろうか。
そして、もちろん俺は、そんな食生活に非常に満足している。
「……水泳、いやだな」
静流がうつむきながら、ぽつりと呟く。珍しく表情が暗い。
「水泳、キライなのか?」
「うん」
「泳げないのか?」
「……うん」
答えた後に、大きな溜め息をつく。
「うちの学校って、水泳の到達チェックとかある?」
「何だよ、それ? 到達チェック?」
「25m泳げるようになるまで、夏休みに補習受けるとか」
「は!? そんなことする学校があるのか?」
今度は、静流の方が驚いたような顔をする。
「普通にあるよ。――ってことは、補習は無いんだ」
心底ホッとしたような表情をするので、思わず笑ってしまう。
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