第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]

9/75

1183人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
夏休みに補習なんて、自由主義を標榜(ひょうぼう)する海聖では考えられない。 「そんなに苦手なのか?」 「だって……僕、泳げないし……こんなみっともない体型だし……」 みっともない体型……? 突然、頭の中に静流の水着姿が浮かび、思わず飲んでいたコーヒーをふき出しそうになる。 「大丈夫!?」 むせ返る俺に、静流が驚いたように目を丸くする。 「……大丈夫……」 何で俺は、静流の水着姿を想像して、こんなにうろたえてるんだ!? ようやく落ち着いてきた俺の耳に、衝撃的な言葉が飛び込んでくる。 「僕があんまりガリガリでみっともないからだと思うけど、クラスの皆が、僕のことジロジロ見るんだよね。……水泳の授業って他のクラスと輪番合同だから、他クラスの人達もやたら見てくるし……」 再度むせ返りそうになるのを、何とか堪える。 それは、静流が痩せてるからとか、そういう理由じゃない。外部から来た人間には理解できないだろうが、静流の愛らしい容姿からするに、それは好色な意味合いの視線だろう。海星学園はとにかくゲイとバイが多いのだ。 「……静流。おまえ、水泳の授業、休め」 「え!?」 「うちの学校は体育のテストも補習もないし、水泳に出なくても全然問題ない」 「それって、サボれってこと?」 「そうだ」     
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1183人が本棚に入れています
本棚に追加