第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]

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静流が真剣に俺を見つめてくる。真面目な静流の事だ。授業をサボった経験など無いだろうが、魅力的なアドバイスに心が揺れているのだろう。 「でも……」 「それに、乾も、おまえが水泳の授業に出るのはイヤだと思うぞ?」 「どうして!?」 いきなり食い付き度が変わる。 こいつにとって優先度のトップは、常に乾のことなのだ。 「俺も、自分の隊員にはあんまり出てほしくないからな」 続きを促すようにじっと見つめられて、妙に動悸が速まる。 「親衛隊は守護対象者を守る立場だが、逆に、守護対象者も親衛隊員を守る義務がある。……うちの学校には同性を変な目で見るやつも多いからな」 一瞬、ぽかんとした表情を見せた後、いきなり静流の顔が真っ赤に染まる。 「そ、それって、……もしかして、僕のことジロジロ見てくるのは……せ、性的な意味だってこと!?」 そんなに動揺されると、こっちまで気恥ずかしくなる。 「まぁ、そういうことだ」 今まで静流とこういう話をした事がなかった分、静流の取り乱した様子にドギマギする。 きっと静流のクラスメイトや親衛隊仲間も、あまりにも純粋無垢なこいつに、こういう(たぐい)の話をしづらかったのだろう。 「そういう人達もいるって、聞いてはいたけど、……僕なんか、全然……あの、裸になっても、みっともないだけで……」     
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