1188人が本棚に入れています
本棚に追加
[2.邂逅]
入学式を翌日に控えた日の朝、僕は海星聖明学園に併設された学生寮へと足を踏み入れた。
運命を変えるためにというのなら、そもそもこの学園に入学すべきではなかったろう。
しかし、僕がタイムスリップした時点は入学式二週間前という時期で、海聖学園に入学するための手続きは全て完了し、後は僕が入寮するだけという段階だった。家族中が大喜びする中、中学浪人をしてまで他の高校へ入り直したいなどと言える訳もなく、僕は黙って運命のレールに従った。
けれど、白状してしまうと、理由はそれだけではない。
あんなに残酷に捨てられたにもかかわらず、僕の心の奥底には、あの方に会いたいと切望してやまない自分自身がいた。
未来を知っている僕は、乾様を避けるべきだとわかっている。だから、もちろん親衛隊に入るつもりはないし、彼のそばに近寄るつもりもない。ただ、3年間、彼と同じ学園にいたい。彼の姿を遠くから時々見られれば、それだけでいい。
そう願ってしまう自分をどうすることもできなかったのだ……。
受付で入寮手続きを済ませた後、スポーツバッグを片手に、勝手知ったる寮の中へと進んでゆく。
最初のコメントを投稿しよう!