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その返事が妙に嬉しくて、つい笑みが漏れてしまう。
乾なら、一言告げるだけで、いつだってこんな風に静流の気持ちも行動も思いのままにできるのだろう。
ふと、そんな事を思う。
(だから、どうだっていうんだ……?)
胸の奥の微かな痛みを無視して、俺は朝食の席を後にした。
**********
その日、体育の授業は4限目だった。
「腹減ったよな~」
隣を歩くクラスメイトの保坂が、小さく愚痴る。
「4限に体育とか、すっげぇヤダ。それも、水泳とか、空腹で全く泳げる気なんてしないぜ」
保坂は、反風紀勢力グループに属してはいるが、基本は一匹狼で、同じように一人で行動している俺に、時々こうして絡んでくる。
「じゃあ、休めばいいだろ?」
いつも体育の授業なんかロクすっぽ出ないくせに。
「今日はさ、特別なんだよ」
俺の肩に腕を回しながら、意味深に囁く。
「何でだよ?」
「今日の水泳、B組と合同だぜ?」
「だから?」
「もしかして室井は、B組の可愛い子ちゃんの事、知らないのか?」
途端に、頭をガツンと殴られたような気がする。
「すっげぇ可愛い外部入学生がいてさ、前回の水泳の授業なんて、ギャラリーが半端なかったらしいぜ? 2回目がうちのクラスと合同なんて、超ラッキーじゃん」
俺は保坂の体を引き剥がす。
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