第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]

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「どうした? なに怒ってんだ?」 「……そいつは、俺の同室者だ」 立ち止まり、保坂を睨みつける。 「何だよ。おまえ、その可愛い子ちゃんを独占したいのか?」 「そんなんじゃない」 「別に見たって減るもんじゃなし、そもそも室井が怒ることじゃないだろ。乾隊所属の子だって聞いてるけど、禁止令は出されてないぜ?」 そんなんじゃない。 静流は、おまえ達みたいな下種野郎に、そんな目で見られるべき存在じゃないんだ。 あいつは、真っ直ぐで、純粋で、誰よりも綺麗で……。 真っ赤になりながら動揺していた、今朝の静流の姿が甦る。 あいつをそんな汚らわしい目で見るな。 静流は、あいつは、俺の――。 「へぇ。……ノンケの室井をその気にさせる位、その子、ヤバいんだ」 その言葉の意味を脳が理解する前に、俺は保坂を殴りつけていた。 ********** 放課後、謹慎処分で部活もできず、真っ直ぐに寮へと帰る。 俺と保坂の殴り合いはあっという間に全校に知れ渡り、担任と部活の顧問にさんざん絞られた。 ケンカの理由について二人とも答えなかったため、教師達の心証を害したらしい。 カードキーで部屋へ入ると、ドアが開く音を聞きつけ静流が駆け寄ってきた。 「伸!」     
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