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「どうした? なに怒ってんだ?」
「……そいつは、俺の同室者だ」
立ち止まり、保坂を睨みつける。
「何だよ。おまえ、その可愛い子ちゃんを独占したいのか?」
「そんなんじゃない」
「別に見たって減るもんじゃなし、そもそも室井が怒ることじゃないだろ。乾隊所属の子だって聞いてるけど、禁止令は出されてないぜ?」
そんなんじゃない。
静流は、おまえ達みたいな下種野郎に、そんな目で見られるべき存在じゃないんだ。
あいつは、真っ直ぐで、純粋で、誰よりも綺麗で……。
真っ赤になりながら動揺していた、今朝の静流の姿が甦る。
あいつをそんな汚らわしい目で見るな。
静流は、あいつは、俺の――。
「へぇ。……ノンケの室井をその気にさせる位、その子、ヤバいんだ」
その言葉の意味を脳が理解する前に、俺は保坂を殴りつけていた。
**********
放課後、謹慎処分で部活もできず、真っ直ぐに寮へと帰る。
俺と保坂の殴り合いはあっという間に全校に知れ渡り、担任と部活の顧問にさんざん絞られた。
ケンカの理由について二人とも答えなかったため、教師達の心証を害したらしい。
カードキーで部屋へ入ると、ドアが開く音を聞きつけ静流が駆け寄ってきた。
「伸!」
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