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過去の僕は、迷路のように巨大な寮内で迷ってうろうろしたものだが、今の僕にとって此処は既に2年半を過ごした場所で、何の問題もなく真っ直ぐに自室にたどり着く。
コンコンとノックをすると、「どうぞ」という低い声が室内から聞こえた。
ドアを開けて入ると、二人部屋の共用スペースに置かれたソファに、僕の同室者である室井 伸が腰掛けている。
(相変わらずの美形っぷりだけど、やっぱり若いなぁ)
少し前まで青年の風貌に変わりつつある18歳の姿を見ていたから、目の前の彼が妙に幼く見えてしまう。
「はじめまして。今日から入寮する山崎です」
「俺は、室井 伸。3年間よろしくな」
そう言いながら、僕のバッグを持ってくれる。
「ずいぶん重い荷物だな」
「あ、ごめん! 大丈夫だよ、自分で持てるから」
「持ってやるよ」
僕の疲弊した様子を見かねたのだろう、そう言いながら、僕の個室まで荷物を運んでくれる。
自宅から電車とバスを乗り継いで数時間。重い荷物を抱えての移動はかなりきつかった。体力が無さすぎる自分が情けない。
見るからにひ弱で華奢な体型は、ずっと僕のコンプレックスだった。
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