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「静流。静かに流れるって書いて、しずるって読むんだ」
「静流、か。……なんかお前のイメージにぴったりだな」
「そう?」
「静流って呼んでいいか?」
「もちろんだよ。僕も室井君の事、伸って呼ばせてもらうね」
目の前のイケメンに向かって、僕はにっこりと微笑みかける。
以前の僕は、初対面の伸とこんなふうに気軽に話す事なんてできなかった。でも今は、とても自然に彼と会話を交わす事ができる。
そんな変化が、僕に確かな勇気をくれる。
僕は変われる。
そして、これから訪れる未来も、きっと変えることができるはずだ。
**********
翌朝、僕と伸は入学式に備えて、早めに寮を出た。
伸は中等部からの持ち上がり組なので、前年度のクラスでいったん集合してから入学式に向かうらしい。僕とあと二人いる外部編入組の三名は、直接、講堂へ集合だ。
「おまえ、なんか迷いそうだよな」
以前も聞いたセリフに、僕は小さく苦笑する。
「僕って、そんなに頼りなさそうかな?」
「あぁ」
「即答しないでよ」
「でも、実際、方向音痴だろ?」
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