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どうしてわかるんだろう? 確かに僕は、超が付くほどの方向音痴だ。
「まぁ、少しは方向音痴かもしれないけど、でも、講堂の場所くらいはわかるよ」
「ならいいけど。とにかく気をつけろよ」
少し不安げな表情を覗かせた後、伸は僕に背を向けて校舎棟へと歩いていく。
以前はわからなかったけれど、今の僕なら、伸が表情を曇らせた理由が理解できる。
世間から完全に隔離されたこの高名な学園は、思春期の男性ばかりが閉じ込められた一種独特の閉鎖空間だ。だから、友情も恋愛も性欲さえもこの世界の中でしか育めず、また消化することができない。生徒たちは、まるで世界にこの学園しか存在しないような錯覚に陥って、狭い箱庭の中で生きようとし、学園内での擬似的な恋愛やセックスに溺れていく。それゆえ性犯罪も起きやすく、特に僕のようなタイプはそういう対象として狙われやすかった。
海聖学園に入学したての頃の僕は、友人達に忠告されても笑い飛ばしていた。この学校の特異性をわかっていなかったし、自分自身が同性の目にどれほど魅力的に映るかなど全く理解していなかったのだ。
そんな無防備な僕が危険な目に一度も合わなかった理由は、僕が乾様の親衛隊員だったからだ。
敷地が広大な上に、校舎棟・寮棟・各種施設棟が複雑な連絡通路でつながっているため、不慣れな新入生が校内で迷うのは当然で、春先は新入生が上級生に襲われる危険性の高い時期となっている。中でも外部入学生は、身分の低い一般層出身者であるため、加害者にとっては告発リスクの低い格好の獲物と見なされている。
だが同時に、風紀委員の取り締まりも厳戒態勢となっているはずで、危険を理解して慎重に行動すれば、事件に巻き込まれる可能性は限りなく低くなる。
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