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今の僕なら校内で迷うことはないが、人気の無い空き教室に連れ込まれる可能性も有るため、なるべくリスクの少ないルートとして職員室や事務室がある管理施設棟から講堂へと向かう。
突然、強い春風が窓から吹き込んできて、中庭の桜の花びらが廊下へと舞い込んでくる。
僕は足を止め、ゆっくりと窓の外へと視線を移した。
2年半前の入学式の日。
こんなふうに時折の強風に煽られた桜吹雪の中で、僕は彼に出会った。
乾 蒼――乾コンツェルン総帥の嫡男。
その時の僕は、中央施設棟側の中庭で迷子になっていた。
入学式が始まる時刻が近づいているのに、どちらが講堂なのかさえ全く見当がつかず、不安でおろおろする僕の前に現れたのが、彼だった……。
◇◇◇◇◇◇
「外部入学生か?」
背後から問いかけられて振り返った僕は、そこに立つ秀麗な二人組に息を呑む。
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