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あの方は僕のことを信じてはくれない。どれほど泣き、叫び、自分の思いを伝えようとしても、僕の言葉に耳を貸すはずなどないとわかっている。
彼はあの少年に――美しく可憐な、あの悪魔に魅入られてしまったのだから。
そうして、僕は捨てられる。
この学園から追い出され、もう二度と愛しい人の姿を見ることはできなくなるのだ……。
乾会長の姿が校舎の内に消える。
自分の身体さえ支えきれずに、僕の膝はその場でくずおれた。
**********
僕がこの学園に入学したのは、今から2年半前、高校1年の春。
幼稚舎から高校までエスカレーター式になっているこの学校で、非常に珍しい外部入学生としてだった。
それまでの僕は、普通の公立中学校に通う冴えない男子学生だった。
中学3年生になっても背は伸びず、ようやく160㎝を超えた程度。運動神経もあまり良くなく、部活にも入っていなかったため、筋肉のついていない貧相な体格。小学生の頃から視力が悪くてビン底メガネを掛け、猫背気味に背を丸めた僕は、見るからに地味で暗い男子生徒だった。
校内カースト的には最底辺だった僕だが、唯一、学校の成績だけは良かった。
他にすることが無かったからとも言えるが、ありがたい事に勉強に関しては抜きん出て優秀だったのだ。
そんな僕が高校受験を控えていた中学3年の夏休み。
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