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「ただでさえ優斗の同伴者として好奇の目に晒されているんですよ」
冷静な口調の中に、微かに怒りを感じさせる声音が混じる。
(僕を、かばってくれた……?)
「これは大変失礼しました。山崎くんがあまりにも愛らしいので、つい手が伸びてしまいました。確かにこの場にふさわしくなかったですね」
体の熱さえ感じ取れそうな近くに、乾様がいる。
更科様への挨拶を終えた後、僕と西城様は別行動をする事になっていた。当初の予定どおり、今すぐこの場を離れるべきだ。
そう思うのに身体が動かない。乾様の存在が僕の全身を絡め取り、四肢の自由を奪う。
更科様達が交わされている会話が、どこか遠くに聞こえる。
突然、視線を感じて、乾様の同伴者へと目を向けた僕は、その人物を見て声を上げそうになった。
(神代さん……!)
記憶のままの美貌に、あの時と同じ淋しげな瞳。
(「乾様にとって貴方は特別な存在だと、気づいていないのですか?」)
あの時、神代さんは僕にそう言った。
何よりも乾様の思いを信じなさいと、彼は僕に教えてくれたのだ。ずっと心を捧げてきた相手が、突然現れた外部入学生に興味を持ち寵愛を向けるのを見ながら、それでも彼は僕を励ましてくれた。
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