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ボーイから飲み物を二つ受け取り、僕と足並みを揃えるようにしてテラスへと出る。
いつもは制服をおしゃれに着崩している羽賀先輩だが、さすがに夜会の席ではきっちりと燕尾服を身に着けていて、そういう姿もとても格好いい。
「顔色、悪いよ。ほら、オレンジジュースでも飲みな」
「ありがとうございます」
渡されたグラスに口を付けた後、僕は思わず大きく息をついた。
「あそこにいるのは、さすがにきついよな~」
そう言いながら、羽賀先輩が小さく肩をすくめて見せる。
「乾・西城・更科ときたら、旧華族トップの面子だもんな。……その上、君は西城様の同伴者として今日の夜会の注目の的だからね。息苦しいったらないだろう?」
以前の羽賀さんも、現在と同じように僕に接してくれた。乾様からの寵愛を受ける事で、身分違いの成り上がりだと生徒達に後ろ指を指される僕に対して、いつでも気さくに声を掛けてくれた。
「いつも気遣って下さって、本当にありがとうございます」
僕は心を込めて、羽賀さんへ微笑みかける。
「……さすが、"ノンケ殺しの愛天使"って呼ばれるだけあるなぁ」
聞き覚えのある嬉しくない呼び名――そういえば、羽賀先輩は反風紀ルートに強いコネクションを持っている人だった……。
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