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西城隊と連携を組んで会場警備にあたっていた山崎隊の警護隊員達にとって、仲間と認識していた彼の動きに警戒が緩んでしまったのは仕方のない事だったと思う。
さっきの看護師が姿を見せ、救急隊の責任者へ状況報告と引継ぎを行った後、ようやく僕の方へと向き直る。
「乾様の怪我の状態ですが、刃物で左腕を切られ、かなりの出血があったようです。ですが、すぐに止血処置を行ったので命に別状は無いとの事です。乾様は、病院への搬送のため既にヘリポートへ向かわれました」
その報告を受けて、安堵の念が沸き上がると同時に体中から力が抜けていく。
けれど、極度の不安と緊張が収まった次の瞬間、向き合いたくない真実に気づく。
(……僕のせいだ)
僕が時間を遡り、過去と異なる行動をとったがゆえに、運命が変わったのだ。
両親を守るため、学園の生徒達のためにと、そう信じて選んだ僕の判断が、過去には起こりえなかった今回の事件を招いてしてしまった。
(僕が、この世界の事象を歪めてしまったんだ……)
西城隊の警護隊員が僕を狙ったとしたら、理由は一つ。『おまえのような者が西城様に近づくな』という明らかなメッセージ。
憎悪に歪んだ沢渡君の暗い瞳が脳裏に甦る。
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