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「それにしても、ここは日本で一、二を争う特権階級ご用達の大学病院だぞ。そんな所のVIP室に入院させるなんて、おまえの友達、何者だ?」
からかうような父の言葉を、僕は笑って受け流す。
まさか、その友達が西城財閥創業者一族の本家嫡男だと知ったら、家族全員が腰を抜かすかもしれない。
「お話し中、失礼致します」
軽いノックの音が響いた後、扉の向こうから北方副隊長と久米侍従部長が現れる。
「この度は山崎様の御身をお守りする事ができず、大変申し訳ございませんでした」
腰を深く折る二人を、家族全員が驚いたように見つめる。
「北方さん、久米さん、頭を上げて下さい。お二人が謝る必要はないです」
「静流は、学校行事の最中に転んだって聞いてますが……?」
気を取り直したらしい父が、そう尋ねる。
「はい。ですが、山崎様をお守りするのが私たちの役目ですので」
「”山崎様”って、静流、おまえ、まさか……」
「うん。このお二人は、僕の親衛隊で部隊長をして下さってる先輩方なんだ」
「北方と申します。山崎隊の副隊長を務めさせていただいております」
「久米です。山崎様の警護を担当しております」
突然、姉が『ひゃあ~』っというような小さな奇声を上げた。目を大きく見開き、両手で口を覆いながら、ふるふると喜びに震えている。何を考えているかは、だいたい想像がつく。
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