第3部 Lapse of Time [現在]

84/132
前へ
/344ページ
次へ
「静流の、親衛隊……!?」 海星聖明学園の親衛隊制度は、半世紀以上も続く伝統ある制度で、特権階級だけではなく一般人にも広く知れ渡っている。 「本来でしたら幹部全員がご挨拶に伺うべきなのですが、学期終了が近いため席を外す事ができない者も多く――」 「とんでもないです! 二、三日もすれば僕も退院できるんですし、そんな事をしていただく必要はないです」 僕の言葉に同意するように、家族全員が慌ててうなずく。 「西城様もご家族に挨拶をされたいとおっしゃっておりましたが、事後の対処に追われ学園を離れることができないと……」 「西城様っ!?」 素っ頓狂な声を上げたのは、もちろん姉さんだ。「西城様って……、もしかして、西城優斗様!?」 「はい」 北方さんの返事を聞いた母が、ヘタヘタと椅子に座り込む。 財閥直系の御曹司は世の女性達にとって憧れの的なのだが、特に乾様と西城様については、女性週刊誌で写真が掲載されたり、特集が組まれたりするほどの有名人らしい。 「まさか、この病院を紹介して下さったのは、西城本家のご子息なのか?」 父が小さな声で僕に問い掛ける。 「……うん」 絶句する家族をよそに、北方さんが再び口を開く。     
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1188人が本棚に入れています
本棚に追加