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「では、こちらが山崎様のお部屋のカードキーです。また、夏休みに入ると学園全体が閉鎖されますので、開校中に来られない時のために正門と南寮の鍵もお渡ししておきます」
「ありがうございますっ!」
手渡された鍵を、姉がキラキラした瞳で見つめている。
暴走気味の姉の言動に全く動じない北方さんがさすがだ。
「それでは、また明日うかがわせていただきます」
北方さんと久米さんが頭を下げるのに合わせて、両親と姉が慌てて姿勢を正して礼を返す。
二人の姿がドアの向こうに消えた後、病室には何とも言えない空気が流れる。
「乾様も怪我をされたのか!?」
「西城様とお知り合いなの!?」
「親衛隊の事、詳しく教えて!」
三人の叫びが重なり合って、部屋中に響き渡る。
「えっと……、誰の質問から答えればいいかな?」
そう言いながらも、この後、我が家に巻き起こるであろう騒動を予想して、僕は大きな溜め息をつくしかなかった。
******
夕飯を終え、窓際で宵闇に沈む風景を眺めていると、小さくドアがノックされた。
「どうぞ」
答えると同時に扉が開かれ、真剣な面持ちで伸と川瀬さんが室内に入ってくる。
「失礼致します」
「わざわざ来ていただいて申し訳ありません」
川瀬さんの挨拶に答えながら、
「伸もごめんね。インターハイで大変な時なのに」
そう言って伸へと視線を向ける。
伸は黙ったまま僕を見つめている。
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