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突然、父が僕に学校案内のパンフレットを差し出してきた。
「静流、お前、この学校を受験してみないか?」
にこやかに微笑む父から渡されたパンフレットは、びっくりするほど装丁が豪華で、中をパラパラ見てみると、都心の最新オフィスビルかと思うような校舎や寮の設備(屋上にヘリポートまである!)、広大なグラウンドに体育館、ジムが完備された室内プールなど驚くような内容だった。巻末に記載されている入学金や学費も目が飛び出るような金額だ。
「父さん、この学校、何?」
こんな学校、庶民の僕からすると、まるで別世界だ。
「乾社長のご子息が通っていらっしゃる学校だそうだ」
父が誇らしげに言う。
乾コンツェルン――日本最大の財閥、乾グループは、世界屈指の国際的企業グループだ。金融、通信、製造、流通、果ては軍事産業まで、あらゆる国と業種の企業を傘下に有している。
過去の世界大戦で連合国軍に敗戦した日本は、しかし戦後、驚異的なスピードで経済復興を成し遂げ、今や世界経済の頂点に君臨するまでになっていた。
そして、この国が奇跡的な経済発展を遂げた最大の要因こそ、占領軍が推し進めた財閥解体策を回避し、圧倒的な力で経済を牽引してきた巨大財閥群によるものだと言われている。
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