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「えーっとですね……」
長友さんがページをめくる音がなぜか耳障りに感じる。
「あぁ、これだ。――『杉下 薫』ですね」
突然、体が震え出す。
激しい目まいを感じ、僕は机に寄り掛かるようにしながら、その場に座り込んだ。
「山崎様!? 大丈夫ですか!?」
僕の元に駆け寄った長友隊長の手から、書類の束が滑り落ちる。
そのファイルの中からこぼれ落ちた一枚の写真。
耐えられないほどの恐怖に打ち震えながら、僕は、裏側になっているその写真を拾い上げた。
手のひらの中で輝くような笑顔を見せている少年は、あの時、僕を絶望の淵に叩き落した悪魔だった。
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