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2年に上がって侍従部副部長に昇格したとはいえ、守護対象者でもない静流に警護隊員が付いているのは異例のことだ。
「……失礼します」
そう言って静かに歩き出す静流を引き留めたい衝動を必死に堪える。
静流は乾のそばにいる事を選んだ。
それが、静流にとっての幸せなんだ。
乾の静流に対する態度は、他の親衛隊員に向けるものとは明らかに違っていて、その寵愛ぶりは乾隊内部はもちろん学園全体に様々な波紋を呼んでいた。
静流が乾に強く惹かれたように、誰ひとり寄せ付けなかった乾が今、静流の存在によって変わり始めている。
それはまるで、互いの存在が"運命"でさえあるかのように。
だから、俺は――。
******
部活を終えた後、ふと思いついて親衛隊室へと足を向ける。
既に21時を回った時間で、当然誰もいないだろうと思いながら鍵を開けると、隊長室から明かりが漏れている。
ノックすると、すぐに「どうぞ」と声が返ってきた。
ドアを開けた俺を見て、川瀬さんが驚いたような表情を見せる。
「室井様、こんな時間にどうされました!?」
「川瀬さんこそ、こんな時間まで仕事ですか?」
問い返すと、川瀬さんがニコリと微笑む。
「隊長会議が長引いたんです」
「そうなんですか。遅くまでお疲れ様です」
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