第1部 Boy meets boys [現在]

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敗戦国だったはずの日本は、わずか70年の時を経て、広大な領海から採掘される天然資源と官民一体の強固な挙国一致体制で、世界に比肩する国が無いほどの経済的繁栄を謳歌する国家へと発展を遂げた。と同時に、財閥を支える特権階級層が政治経済を牛耳る完全なヒエラルキー社会が形成されていた。 そんな我が国で、世界経済に多大な影響力を持つといわれる巨大コンツェルンは五つ有る。乾、西城、宇津木、天堂、末兼(すえかね)の五大財閥。さらに、その下のクラスとして十大財閥と呼ばれる企業グループ群が存在している。 それら五大財閥の中でも最大かつ最強と呼ばれる乾コンツェルンに、父の会社は1年程前にM&Aされたのだった。 父は、僕が小学1年の時、勤めていた会社を辞め、金融コンサルティング会社を設立した。設立後数年間は経営が厳しかったらしく、早朝から深夜まで働きづめの父と会えるのは、月に数回程度だった記憶がある。その苦労が実ったのか、やがて父の会社は軌道に乗り、規模が拡大していった。そして、その実績と手腕を見込まれて、遂には世界的大企業グループである『乾』の一員にまでなったのだ。 「乾社長のご長男が、お前と同じ年なんだよ」 保有資産は小国の国家予算にも匹敵すると言われる、乾一族の本家。 その嫡男にあたる方なんて、年齢と性別が僕と同じなだけで、それ以外に一切の共通項があるはずもない。完全に別次元の存在だ。 「この学校に入学すれば、乾様と同級生になれるんだぞ!」     
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