第1部 Boy meets boys [現在]

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興奮気味の父に気圧されつつ、僕もその熱気に当てられ始める。 父は、M&Aの契約時に一度会っただけの乾社長に心酔しきっていて、つい先月も半年に1回の乾グループのテレビ会議があったとかで、その時の乾社長の話を僕に繰り返し聞かせるほどだった。 確かに、父と同年代の四十代後半という若さで世界企業のトップに君臨できるというのは、世襲という理由だけではないはずだ。苛烈な経済戦争を勝ち抜くだけの能力やカリスマ性を持っている方に違いない。 僕は心から父を尊敬していたので、父から受ける影響は多大で、乾一族に対して並々ならぬ憧憬を抱くようになっていた。友人達が芸能人やスポーツ選手に憧れるように、僕にとっては、経済界の頂点に立つ乾家こそがヒーローだった。 だから、わずかな迷いはあったものの、僕はすぐに父の薦めを受け入れることにしたのだ。 そして、外部入学の最難関校とも言われる『海星聖明学園高校』の試験に、僕は合格した。 ********** 「(しず)くんは、(もと)はすっごくいいんだからねっ!」 2つ上の姉が言う。 「だから、姿勢を良くして、堂々としてればバッチリよ?」 海星聖明学園に入学が決まった僕に、腐女子の姉は嬉々として”弟改造大作戦”を実行した。     
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