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僕の場合は、外見と学校の成績という2点で高い得点をもらえたらしい。
社会的地位という点では、一応は乾グループ子会社の社長令息という立場だが、この学園でいえば下位レベルに過ぎない。何しろ国内トップの富裕層一族がゴロゴロしているのだ。
それでも僕は、憧れだった乾様の親衛隊に入隊することを許され、2年生に上がる頃には、乾様の寵臣として取り立てられるまでになっていた。
全てが夢のようだった。
乾様に愛されるために、僕は必死に勉強し、外見を磨き、そして、いつしか醜い権謀術数までをもめぐらすようになっていった。
そう、僕は、どこかで進む道を誤ってしまったのだ……。
そして、高校3年の春。
新入生として、あいつが入学してきた。
乾様のご寵愛を一身に受けることになる、あの少年。あどけなく愛らしい仮面の下で、嘘と邪にまみれたあいつが。
彼が入学してから半年後、愚かな僕は見事に仕掛けられた罠にはまり、背信の罪を着せられて退学を命じられる。
乾会長に二度と会うことができないという圧倒的な絶望に打ちひしがれながら、僕は学園を後にするしかなかった。
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「ただいま……」
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