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第2部 Another Heaven Ⅰ [過去]
[14. 高校1年・春【優斗】]
初めて出会ったのは、入学式の日。
外部入学生だった彼は、広大な学園の敷地内で迷い、途方に暮れているようだった。
天使のように愛らしい面差しが戸惑いと不安に翳る様から、目を離せなくなる。
美しい人間なら嫌というほど見てきた。でも、目の前の少年の儚げな美しさは、何かが違っていた。
「外部入学生か?」
隣を歩く蒼が彼に声を掛け、僕は驚いて親友へと視線を移した。
蒼は見ず知らずの人間に声を掛けるようなタイプではない。ましてや、困っている相手に手を差し伸べる事などしない男だ。
「入学式に行くつもりならついて来い」
外部入学生の少年が驚いたように目を見張る。そして、次の瞬間、彼の視線が蒼に捉われるのがわかった。
しなやかで美しい野獣のような親友に、多くの人間はあっという間に夢中になる。そんな光景を幾度も見てきたはずなのに、その時、僕の胸にかつて感じたことのない痛みが走った。
その痛みの正体がわからぬまま、僕はただ、この少年が蒼のものになるだろうことを確信していた。
そして、あの夜。
4月の終わりで、陽が落ちて急激に冷え込み始める時間帯。
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