第4部 Another HeavenⅡ [過去]

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第4部 Another HeavenⅡ [過去]

[40. 高校2年・春【伸】] その時、半ば駆け足で体育館へと向かっていた俺は、管理施設棟の連絡通路から出てきた人影に気づけなかった。 「あっ!」 小さく上がった驚きの声と左肩への衝撃。 慌てて左へ視線を転じると、俺にぶつかってバランスを崩した静流を、隣にいた長身の男が抱き止めるのが視界に入った。 「静流、大丈夫か!?」 俺の言葉に静流が伏せていた目を上げる。 「大丈夫です」 「急いでて周りを見てなかった。ごめんな」 「いえ、僕もちゃんと前を見ていなかったので。失礼しました」 よそよそしい口調に胸が小さく痛む。 「……たまには南寮にも戻ってこいよ」 静流が乾のペントハウスで暮らすようになって半年近く経つが、表向きは南寮で俺と同室という事になっていて、部屋は以前のままに据え置かれている。 「伸――」 俺の名を呼ぶ、懐かしい響き。 「山崎君、乾会長がお待ちだ」 背後にいた男の低い声が静流の言葉を遮る。 乾隊警護4席の水樹 (かなめ)。無骨な武士のような雰囲気を纏う大柄な男は、一瞬鋭い眼差しで俺を見据えた後、おもむろに頭を下げた。 「室井様、大変申し訳ございませんが、急いでおりますので」
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