花開く時はすぐ

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 俺と佐久の因縁は、この頃から始まっている。  佐久は一年のときも今と変わらず隣のクラスだった。この佐久が、まあ目立つんだ。姿勢が良いだけではなく、顔も男前だった。切れ長の目は強い意志を感じさせて、佐久の男としての自信が見えているようだった。俺でさえ「あ、こいつカッコイイ」って初対面で見惚れたほどだ。背も悔しいことに、髪を逆立てなくても180cmある。性格はクールで、俺とは正反対。  クールなくせに、佐久は来るもの拒まずのバリタチだった。高校一年にしてバリタチってなんなのよ? って感じだったけど、こいつがモテるのなんのって。きゃぴきゃぴとしたミーハーな美少年コノハ君曰く、憂いを帯びた瞳が堪らないのだとか。  そんなこんなで、俺と佐久は校内のタチ男子としての人気を二分しているわけだ。しかも、俺から佐久に乗り換える子が多い。非常に多い。なんでなの。  ふられて乗り換えられた数々の思い出が頭を過ぎり、悲しくなったところで佐久の姿がもう見えなくなっていることに気がついた。  あいつ美術棟なんかに何の用だろう? もしかして美術がすげえ苦手で補習とか? あいつの弱味を握れるチャンス? ……美術の補習が弱味になるかは置いといて。  俺は佐久の消えた美術棟へ向かって走りだした。
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