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「イラつくなよ、ティアニー少佐。親譲りのこぎれいな顔でどんな鳴き声を聞かせてくれるか、試してみたいきもするが……噛みつかれるのは、面倒くせぇしな」
からかっているだけとは分かっているが、エフレムとの関係を探られているようで面白くない。
秘密裏に取引をしているとはいえ、エフレムもニールも目立つ存在だった。
どこまで噂が回っているのか、確かなことは分からないが、詮索の全てを割り切って無視できるほど達観はしていない。
「……で、オレになんのご用で?」
無駄話を重ねれば、何かの拍子で刀を抜きかねない。
ニールはヴァレリーの挑発を無視して、話を進めた。
軍人であっても、帝都での刃傷沙汰は御法度だ。あまつさえ、上官に斬りかかったとなるとただでは済まない。
ニールは特に、皇位継承権を手放していても命を狙われる立場にある。難癖をつけられ、問答無用で死刑だなんてごめんだ。
「端的に言えば、要人の警護についてほしい」
「……は? 警護?」
「気持ちが良いくらいの、阿呆面だな」
肩を揺らし、ヴァレリーはのっそりとした歩みでニールへと近づいてくる。
「特別に、もう一度、丁寧に言ってやろう。ニール・ティアニー少佐、貴様に命じるのは、とある要人の警護だ」
「とても、オレがすべき仕事とは思えませんがね」
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