皇帝の血 5

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 やれと言われれば、やるしかないが、もののついでというわけにもいかない。 「そう、せっつくな。早漏なのか?」 「……はぁ? いちいちくだらない冗談を差し込まないと説明ができないのですかね?」  思わず腰に下げた刀に手を伸ばすと、ヴァレリーがからかうように鼻を鳴らした。 「任務の期間は、せいぜい一週間程度だろう。叙勲式については、心配はいらねぇ。ここだけの話だが、皇帝陛下の体調がどうにも優れないようでな。叙勲式の日程めどが立ってない状況だ」 「初耳だ。……あの陛下が、体調不良だなんて想像できない」  ヴァレリーは大きな執務机の抽斗から、蝋で止められた封筒を取り出し、ニールに手渡した。  任務の詳細が書かれているものだろう。 「皇帝陛下といえど、年には勝てないってやつだな。めったに下々に姿を現さないからな、全盛期の印象が強いんだろうよ」  他人ごとのような調子のヴァレリーに、ニールは渋い顔を作った。  強国の皇帝の体調が思わしくないなど、外部に漏れ出てはいち大事だ。 (オレや、フェレ大佐が帝都に呼び戻されたのにも、関係があるのかもしれないな)  ニールの叙勲式など、言ってしまえば今更なのだ。  勲章を与えるという建前で、帝都の守備を厚くくする狙いがあるのかもしれない。 「物騒な話ですね」     
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